侍戦隊シンケンジャー、その「第一幕」の「第一話」としての完成度を説く。

今年2019年2月15日、あるテレビドラマが放送10周年を迎えた。

その名は「侍戦隊シンケンジャー」。

 

本作は日本を代表する特撮ヒーローシリーズである「スーパー戦隊シリーズ」の第33作で、今やすっかり売れっ子俳優となった松坂桃李氏のデビュー作にして初主演作でもある。

シンケンジャー」には数多くの魅力があり、私自身数ある戦隊シリーズの中でも本作を高く評価しているのだが、今回着目したいのは第一話(番組内では「第一幕」と呼称)の完成度だ。

 

結論から言うと「第一話としてほぼ完璧な出来」だと思っている。

言うまでもなく、「第一話」というのはテレビドラマにおいてとても重要な存在だ。そこで番組の魅力をしっかりと伝えて、視聴者の心をしっかりと掴まなければならない。それはジャンルや対象年齢がどうであれ共通の課題だろう。

そして番組の魅力を伝えるためには、まず番組の内容を確実に伝えなければならない。具体的に挙げるなら、

・主要登場人物

・世界観

・基本設定

の主に三点となるだろう。

 

では「シンケンジャー」がいかに優れているのか、実際に第一幕、「伊達姿五侍」の内容を紐解いてみよう。

(注・東映公式Youtubeチャンネルでの配信は2019年8月30日まで。)

 


侍戦隊シンケンジャー 第01話[公式]

 

第一幕「伊達姿五侍」

第一幕「伊達姿五侍」

 

 

シーン1

少年が壁に向かってキャッチボールをしている。

すると跳ね返ったボールが地面に置いてあった荷物の隙間に入り込んでしまう。

ナレーション「隙間。それは、この世とあの世の間。」

少年がボールを取ろうとする。

ナレーション「化物たちの入口であり、出口。だから、決して覗いてはいけない。」

少年の手を何かが掴む。

ナレーション「隙間の向こう、三途の川から外道衆がやってくる!」

荷物と壁の隙間から無数の化物(ナナシ連中)が出現。

怯える少年のもとへ赤い動物のような物体(獅子折神)が現れ、化物を蹴散らす。

赤い物体が誰かの手に収まる。

彦馬「逃げるんだ。さあ!」

老人(日下部彦馬)が子供をつれて逃げると、赤い物体を手にした人間が筆のような道具を構える。

間髪入れずに煙幕を投げる黒子たち。

煙幕が晴れると、筆のような道具(変身アイテム・ショドウフォン)を構えた人間がいた場所には赤い戦士が立っていた。

彦馬「外道衆共、よーく聞け!こちらに負わすのは、三百年の昔より、貴様達を葬ってきた侍の末裔、志葉家十八代目当主であるシンケンレッド・志葉丈瑠様だ!」

うろたえる化物たち。

ナナシ連中「志葉!?」「シンケンレッド!?」

彦馬「さぁ、恐れ入って隙間に帰るか、殿の刀の錆となるか、しかと…」

シンケンレッド、武器の準備をする。

レッド「ジイ。」

彦馬「はっ!」

レッド「長い。」

面食らう彦馬。

彦馬「いやしかし、戦いという物はまずは…」

シンケンレッド、刀(シンケンマル)を構える。

レッド「参る。」

 

 

 

ここまで番組開始からほんの1分27秒。しかし、この時点でかなりの内容が詰まっているのがおわかりだろうか。

まず最初のナレーション、

「隙間。それは、この世とあの世の間。化物たちの入口であり、出口。だから、決して覗いてはいけない。隙間の向こう、三途の川から外道衆がやってくる!」

この言葉とその間流れる映像を交える事で、

・外道衆という化物が存在している。

・住処は三途の川。

・物と物の間に生じる隙間を介して三途の川から人間界に侵攻してくる。

という番組の世界観の一部と、悪役に関する基本設定を一気に説明している。なお、この時点では番組開始からまだ30秒しか経っていない。

 

次に着目すべきは志葉家の家臣、日下部彦馬の台詞だ。

彦馬「外道衆共、よーく聞け!こちらに負わすのは、三百年の昔より、貴様たちを葬ってきた侍の末裔、志葉家十八代目当主であるシンケンレッド・志葉丈瑠様だ!」

この台詞から伺える事は主に下の四つ。

・三百年前から侍達が外道衆を退治してきた。※1

・その末裔が志葉丈瑠。※2

・丈瑠は志葉家十八代目当主の座にいる。※3

・シンケンレッドという赤い戦士とのしての姿も持つ。※4

と、世界観が補完されつつ、今度は番組の主人公に関する説明がなされた。

スーパー戦隊シリーズは変身ヒーロー番組である以上、主人公である変身ヒーロー、そしてそんなヒーローと対立する悪役が二本柱である。テレビドラマの第一話として番組の基本的な内容を伝える際には、この両者の説明が命だ。

その点に立ってみると、シンケンジャーは番組開始からわずか1分27秒でヒーローと悪役に関する基本的な情報を的確に説明し、最終的に

 「この番組は侍と外道衆の戦いを描いていくものである。」

と、番組の内容が一言で要約できるようになっているのだ。

これは見ている視聴者にとっても非常にわかりやすい。

ここから番組は主題歌に合わせてシンケンレッドの大立ち回りに突入するのだが、番組の基本構造は既に視聴者の頭の中にある。故に視聴者は置いてきぼりになる事なく、安心してバトルを楽しむ事ができるのだ。

 

では、時間を少し進めて3分08秒。ナレーションによるタイトルコールが終わってからのシーン。

シーン2

彦馬「殿、お見事!」

シンケンレッドが変身を解いて志葉丈瑠に戻る。

彦馬駆け寄る。

彦馬「いやお見事でしたぞ殿!このジイも、全身全名でお育てした甲斐があるというもの。ハッハッハ!」

丈瑠、黒子が出した手拭いで汗を拭く。

彦馬「しかしながら、恐らく奴の目覚めが近いかと。ここは先手を打ち、シンケンジャー結成のご決断を!」

丈瑠「その話はいい!」

丈瑠、黒子が出したお茶を飲む。

彦馬「いや、外道衆を侮ってはなりませんぞ! いずれお一人では手に負えぬ時が必ず参ります。その時のために、育てられた侍は四人。忠義の家臣として、戦う日を待っております!」

丈瑠「とにかく、俺一人でいい!だいたい、忠義とか、家臣とか、時代錯誤なんだ!帰る。」

ここで3分58秒。この50秒間では主に以下の情報が提示されている。

・外道衆には何か大物がいる。※5

・侍は志葉家の当主だけでない。※6

シンケンジャーという侍の戦闘集団が存在する。※7

シンケンジャーの構成員は殿(丈瑠)と家臣四人の計五人。※8

・丈瑠は家臣の招集には消極的。

ヒーローと悪役という二本柱を通して、番組の三大要素(登場人物、設定、世界観)を説明するという方針は変わっていない。最初の1分27秒で伝えた「ヒーローと悪役に関する基本的な情報」とは具体的にはシンケンレッド・志葉丈瑠と敵組織・外道衆全体についての情報だ。

そして番組はここから、シンケンレッド率いるシンケンジャーの主要構成員、そして外道衆の主要構成員に関する説明に入る。上に挙げた要点はいずれもその伏線だ。最初の情報説明から有機的に次の情報説明に繋げているのがわかる。

 

それでは早速最初の伏線回収を始めよう。4分04秒のシーンから、

シーン3

隙間を介して三途の川の岸から丈瑠達の様子を見ている化物(骨のシタリ) がいる。

シタリ「う~ん…」

どこからか響く三味線の音色。

シタリ「やっと目覚めたらしいな…」

川の底から船(六門船)が浮上してくる。

船の中で何者(薄皮太夫)かが三味線を弾いている。

シタリが船内に入ってくる。

シタリ「おおっ、久しぶりだね薄皮太夫。おや、ドウコクが見えないよ。おかしいね、奴が目覚めたから、船が浮き上がったんじゃないのかい?」

薄皮太夫「さぁねぇ、わちきはドウコクのお守りじゃない。」

シタリ「いや、そう言わずにさぁ、あの血祭ドウコクをなだめられるのは、お前さんか酒だけなんだから。」

ドウコク「うるせぇぞシタリ!俺はここにいる。」

船の奥からドウコクが出てくる。

ドウコク「眠気覚ましにその無駄にでけぇ頭二つに割って、丼にしてやろうか!?」

シタリ「いやぁ、こりゃ随分機嫌が悪いな!これ誰か!ドウコクに酒をやっておくれ!」

ナナシ連中がドウコクの杯に酒をやり、ドウコクが飲む。

シタリ「どうやらバラバラになった体も、元に戻ったねぇ。」

ドウコク「手間取っちまったぜ…あの忌々しい志葉一族のせいでよぉ。皆殺しにしてやったのが、せめてもだ…」

シタリ「いやそれがさぁ、生き残ってたんだよ。シンケンジャーがねぇ。」

ドウコク「!?」

太夫、演奏を止める。

薄皮太夫「本当かい!?」

ドウコク「ほほう…それじゃ何か?俺のやられ損だってのか!」

ドウコクがシタリに詰め寄る。

シタリ「ああ、いやいやいや…そそそ」

そこへ別の化物(カゲカムロ)が現れる。

カゲカムロ「何だ何だ、大将が目覚めたっていうから祝いに来て見りゃ、葬式みてぇじゃねぇか!どうした?」

ドウコク「うるせぇっ!」

ドウコクが床に刀を叩き付けると船が揺れる。

ドウコク「こんな胸糞悪い話が、あるかー!」

シタリ「お前さん。ちょっと行って、人間に悲鳴上げさせてきな。」

カゲカムロ「はっ、大将の憂さ晴らしってわけか。引き受けた!」

 ここで6分35秒。約2分半の間では以下の事が伺える。

・彦馬が言っていた奴とは血祭ドウコクの事。

血祭ドウコクは「大将」と謳われている外道衆の親玉。

・ドウコクはかなりの激情家で薄皮太夫や酒の力でもないとなだめられない。

・シタリも外道衆の中では他の者に指示を出せるだけの立場にはある。

・ドウコクは志葉一族やシンケンジャーと因縁があった

ドウコク自身もバラバラにされたが、シンケンジャーを皆殺しに追い込んだと誤認するほどの激闘を繰り広げた。

彦馬の言っていた「奴」が血祭ドウコクである事が早速明らかになった。また、外道衆の主要構成員、即ち悪役のレギュラーがドウコク、シタリ、太夫の3人である事も示されている。

 

次は残りのシンケンジャーに関する伏線回収だ。6分39秒のシーンから。

シーン4

歌舞伎舞台で青年(流ノ介)が稽古をしている。

そこへ一人の男性が駆け寄る。

流ノ介の父「流ノ介。」

流ノ介「父さん。」

流ノ介の父「今日の本番は頑張りなさい。最後になるかもしれないから…」

流ノ介「え?」

驚く流ノ介に父は「水」と書かれた物体(龍折神)を見せる。丈瑠が持っている物と似ている。

流ノ介の父「どうやらその時が近い。」

流ノ介が受け取る。

流ノ介の父「我が池波家は代々志葉家に仕える家柄。心得は全て教えた通りだ。いざという時にはいかなる時でも、殿となる方の元へ…」

流ノ介「はい。」

流ノ介の父「まだ見ぬ前の仲間達も、思いは同じだろう。」

幼稚園で女性の先生(茉子)が子供達の相手をしている。

園児「ねえ 茉子先生…。」

茉子「はい順番順番。ほら、皆で遊ぼう皆で、ほら! 」

ゲームセンターで若者達(千明達)が遊んでいる。

千明の友人「千明すげえじゃん!やるねぇ! 」

千明「だろ?俺これ得意なんだって!」 

森の中で一人の女性(ことは)が笛を吹いている。

三人とも、丈瑠や流ノ介が持っている物品と似たような物を所持している。

ここで7分50秒。 1分11秒の間では以下の事が伺える。

家臣の一人である流ノ介は代々志葉家に仕える池波家の人間。

・家臣四人は全員違う家系の人間。

・構成員は男二人、女二人。

・お互い面識はなく、実戦経験もなさそうだが準備はしてきたらしい。

・丈瑠も含めて何か共通の装備がある。

シンケンジャーとなる家臣四人の概要がまとめられている。特に大事なのは4番目にある、

「お互い面識はなく、実戦経験もなさそうだが準備はしてきたらしい。」

という点だ。

ここが殿である丈瑠との大きな違いになっている上に、彼らに説明する形で更なる番組の追加情報を視聴者に伝えていける体制が整った。これはBパートの戦闘に活きてくる。

また、番組冒頭で丈瑠が使った装備(獅子折神)と同等の物を家臣達も全員持っている事が分かった。これも、Bパートの戦闘への伏線となっている。

 

この後カゲカムロが人間界に進行してくるわけだが、その事を彦馬が察知したシーンを見てみよう。8分17秒から。

シーン5

屋敷の縁側で、丈瑠が獅子折神を手にしてくつろいでいる。

そこへ彦馬が駆け寄る。

彦馬「殿!殿!外道衆ですが、ナナシ連中よりさらに力のある、アヤカシまで動き出したの事。もはや一刻の猶予も、侍たちを呼び出しまする!」

丈瑠「待て!俺一人でやるって言っただろ!?」

彦馬「いつまでその様な事を、意地を張ってる場合ではありませんぞ!ドウコクの強さはご存知のはず!」

丈瑠「だからだ!だから、そんな奴との戦いに巻き込んでいいのか!?会った事もない奴らを…」

彦馬「亡き父上のお言葉、お忘れか!?」

(回想)

炎に包まれた館の中で、満身創痍の男性(丈瑠の父)が少年(幼少期の丈瑠)に近づく。

丈瑠の父「忘れるな!今日からお前が、シンケンレッドだ!」

丈瑠の父、獅子折神を丈瑠に渡す。

丈瑠の父「決して逃げるな!外道衆から、この世を守れ!」

彦馬「侍として生まれた者の宿命。皆覚悟はできてるはず。そして、それは殿も同じ。辛くとも、背負わなければなりません!」

彦馬が矢文を放つと、流ノ介たちの元に届いていく。

ここで9分54秒。この1分37秒でわかる事は以下の3つ。

・外道衆にはナナシ連中と上位種であるアヤカシがいる(この後カゲカムロの台詞や戦闘で両者がより明確に区別できるようになっている)。※9

・丈瑠が家臣の招集に消極的なのは、強大な敵との戦いに見ず知らずの他人を巻き込む事への抵抗感からだった。

・過去のドウコクとの戦いで丈瑠の父は死に、シンケンレッドの座を託された。※10

ここではシーン1~4の内容を踏まえた上で、主人公である丈瑠の掘り下げが改めて行われている。

これは私個人の感想になるが、当初丈瑠が家臣の招集を頑なに拒み、「俺一人でいい!」と主張したのは、単に自分の力を過信していたからだと思っていた。

「ああ、それでこの後の戦闘で一人で戦い抜く事の限界を痛感し、家臣招集を決断するんだな。チームワークを重んじる戦隊らしい筋書だ。」

などと予想していたが大外れだった。丈瑠は自信家などではなく、誰よりも戦いの過酷さ、外道衆の恐ろしさを知っているからこそ、赤の他人を巻き込む事を嫌う、正義感が強く情け深い人物なのだ。

さらにそこから間髪入れずに戦死した父親との回想シーンを挟む事で、より説得力を持たせる。第一話から誠に丁寧な心理描写である。ここで私の中でも丈瑠への好感度が一気に増した。

そしてこれらシーン1~5の内容が、この後召集に応じた家臣四人の前で丈瑠が言う、

「最初に言っておくぞ。この先へ進めば、後戻りする道はない。外道衆を倒すか、負けて死ぬかだ!それでも戦うって奴にだけ、これ(ショドウフォン)を渡す。ただし、家臣とか忠義とか、そんな事で選ぶなよ。覚悟で決めろ!」

という台詞に繋がってくるのだ。

 

また、シーン1、2、5を振り返ると彦馬の台詞に説明台詞がかなり多い事がわかる。※で記したチェックポイント10個は、いずれも彦馬の台詞がきっかけだ。これだけ説明台詞が多いと、下手なドラマなら不自然さやくどさが目立ってもおかしくないが、こと「シンケンジャー」においてはそのような違和感は全くない。これもひとえに、メインライターを務めた小林靖子氏の台詞回し、そして彦馬役の伊吹吾郎氏の演技力や貫禄の賜物だろう。

 

さて、次はとうとう結成されたシンケンジャーの戦いを見てみよう。少し時間を飛ばして、19分04秒から、

シーン6

シンケンレッドの攻撃で爆死するカゲカムロ。

その様子を見る家臣達。

シンケンイエロー(ことは)「凄い…殿様…」

シンケングリーン(千明)「俺も凄いぜ。結構できるじゃん!」

シンケンピンク(茉子)「何とかなったってレベルね……」

シンケンブルー(流ノ介)「殿!」

レッド「油断するな!アヤカシは命を二つ持ってる。今のは一の目だ。すぐ二の目が出るぞ。」

家臣達「えっ?」

カゲカムロが巨大化して復活。

カゲカムロ「貴様ら、叩き潰してやる!」

カゲカムロが反撃に出る。

グリーン「ありかよ!これ!?」

ピンク「そういえば、そんな話聞いたような…」

ブルー「不勉強だぞ。こういう時のために、これがあるのを忘れたのか!?」

ブルーが龍折神を取り出す。

ブルー「折神。それぞれ受け継いだ文字の化身だ。自分と一体化する事で、二の目のアヤカシとも…」

レッド「お前も前置きが長いな。」

シンケンレッド、ショドウフォンと折神を構える。

レッド「獅子折神!折神大変化!」

獅子折神にショドウフォンで「大」の文字を印すと、獅子折神が巨大化。

レッドはコックピットに乗り込んでシンケンマルを搭載する。

ブルー「ああっ、申し訳ありません。すぐに!龍折神!」

ピンク「亀折神!」

グリーン「熊折神!」

イエロー「猿折神!」

家臣達「折神大変化!」

全員それぞれ自分たちの折神に「大」の文字を記し、折神を巨大化させる。

巨大化した折神達が進撃する。

カゲカムロ「来よったな!?」

 

ここで20分37秒。この1分半の間では以下の事が伺える。

アヤカシは命を二つ(一の目と二の目)持っている。

・二の目が発動すると巨大化して復活する。

・二の目のアヤカシに対抗する手段として折神がある。

折神は各家系が受け継いだ文字の化身。

・折神は普段手の平サイズだが、巨大化させる事が出来る。

要するに戦隊のお約束、巨大戦の説明だ。

スーパー戦隊シリーズでは、等身大の敵怪人が倒されると何らかの手段で巨大化して復活し、再び暴れる事がお約束となっている(一部の作品を除く)。戦隊はその度に巨大メカやそれに相当する装備を発動し、敵に対抗するのだ。

シンケンジャー」では巨大化の手段を二の目、対抗手段を折神と設定し、シーン1、4、5で折神の伏線を張っている。

 

なお、戦隊では最終的に巨大メカ等が合体して巨大ロボット(この作品を筆頭に、設定上純然たる精密機械でない場合もある)になるのもお約束だが、本作品では尺の都合でそこまでは行かず、第二幕にお預けとなっている。

 

さて、ここまで「侍戦隊シンケンジャー」第一幕のシーン6つを分析してきたわけだが、相当の情報量がある事がご理解いただけたと思う。これらは全て、本文の序盤でまとめた

・主要登場人物

・世界観

・基本設定

というテレビドラマの三大要素を伝えるためだ。しかもそれらを丁寧に、かつテンポよく視聴者に提示している。

「番組の魅力をしっかりと伝えて、視聴者の心をしっかりと掴む」という「第一話」の使命を十二分に果たしたと言えるだろう。

この完成度の高さと内容の濃さが、「第一話としてほぼ完璧な出来」という私の結論の理由なのだ。

そして、「シンケンジャー」という番組の凄まじい所は第一幕で提示されたこれらの情報の中には「裏」があるという点である。物語が進むにつれ、その意味が次第に明らかになっていく。詳しい説明は控えるので、未見の方は是非楽しみにしていただきたい。